女子であれば誰しも一度は愛する人に想いを伝える為に、甘いチョコレートを渡す日がある

なのに一度もそんなイベントに無関心な女子が一人いる






「なんですか!?バレンタインって」

「お前それマジで言ってるのか?」

「え?え・・・いや・・・はい」











【バレンタイン】











商店街まで足をのばしてみたら、スーパーの前に可愛いらしい箱に入った色とりどりのチョコレートが並べられていて、思わず足が止まった

人だかりができていて、女性ばかりが目を輝かせながらチョコレートを選んでいるの で、奈緒子も一緒になってその中に混ざっていると、肩を叩かれた

「あ!!矢部さん」

「お前こんなとこで何して・・・はっはーん!お前上田先生にあげるつもりやろ?」


「なんで私が上田さんにチョコレートあげるんですか?」

「またすっとぼけて!じゃあ何で楽しそうにココにおるんじゃ」

「・・・だって、チョコレートこんなにいっぱい売ってたら、誰だって飛びつくじゃ ないですか」

奈緒子は再び目を輝かせて、買う金は無いらしく試食のチョコを端から順番に口の中 に入れていく

矢部はそんな奈緒子を眺めながら、「まさかバレンタインを知らんとか言うんじゃな いやろうな?」と声をかけると・・・さっきみたいな返答が返ってきた

























「・・・しまった!!!だからあんなにたくさんのチョコが売られてたという訳です か!」

奈緒子は後ろを振りかえって、楽しそうにチョコを選んでいる女性達を見て、小さく 溜息をつくと矢部にオデコを叩かれた

「にゃあ!!」

「お前・・・本当に今まで女やってきたんかい」

「失礼な!!やってきましたよ!!これでも・・・一応」

奈緒子は額を押さえながら、馬鹿にしたような目で見ている矢部の事を睨んだ

「まぁええわ・・・たまには上田先生にお世話になってる感謝の気持ちを込めて、 チョコの一つくらい渡してやったらどや?」

「お世話になってるつもりはないですし、私に迷惑ばっかりかけてると思うんですけ ど」

下を向きながら悪態をついていると、再び矢部にオデコを叩かれて、奈緒子は仰け 反った

「・・・それに・・・私お金とか無いんですよ。上田さんにチョコ買うくらいだった ら、自分で買って食べた方がマシです」

そう言い残すと、奈緒子はアパートへの道へと引き返していった

「・・・ほんっとに素直な女やないな」



























奈緒子は部屋に帰ると、脱力したように玄関に倒れ込んだ

「チョコ・・・上田に?私が?」

「チョコがどうしたって!?」

「いや・・・なんか矢部さんが・・・って上田!!!!!」

奈緒子が顔を上げると、目の前にはしゃがみ込んで顔を近づけてくる上田の姿

「近いですよ!!!」

そう言うと、奈緒子は上田を力いっぱい突き飛ばして、上田は大袈裟なくらいに倒れ 込んだ

奈緒子は溜息をついて、上田の側まで寄ると倒れている姿を見て小さく溜息をつく

勝手に人の家には上がりこんでくるし、面倒事に巻き込んでくるし、全然私は迷惑し てる

だけど・・・一番私が辛い時に、いつも側に居てくれたのは・・・いつも・・・上田 さんだったんだ・・・

「上田さん何しに来たんですか?」

「YOU、今日が何の日か知ってるか?」

上田は体を起こすと、座布団の上に正座をしていつの間にか淹れたお茶をすすってい る

「知ってますよ、今日が何の日かくらい」

・・・本当は今日初めて知ったんですけど・・・小声でそう言うと上田がすかさず 突っ込んできたので、奈緒子は慌てて次の言葉を取り繕った

「もしかして上田さん、私からチョコ欲しいんですか?」

「な、何を言っているんだYOUは・・・今日学生達にトラック一杯分もチョコを貰っ てしまってね。別にYOUに貰うほど困ってはないんだよ!」

「じゃあ良かったじゃないですか!用がないんだったら、早く帰って下さい!」

「YOUがどうしても俺にチョコを渡したいって言うなら、受け取ってやらなくもない ぞ?」

欲しいなら、欲しいって素直にそう言えばいいのに、全くこの男ときたらなんなんだ ・・・

まぁどうせ、一つも貰ってない事くらい私には全部お見通しなんですけどね
奈緒子は上田を睨みつつ、籐の籠バックからポッキーの箱を取り出してそれを軽く投 げつけると、上田はナイスキャッチをした

上田はそのポッキーの箱を黙って見つめている

「上田さんには、それで十分です」

「ポッキーかよ・・・」

「文句あるんですか!?私が生まれて初めてバレンタインにチョコあげたんですよ! 喜べ!!」

「そうなのか?」

「・・・ええ・・・まぁ・・・」

そりゃ今までそんなイベントの事知らなかったんだもんなぁ・・・

でも・・・知ってたとしても、あげる相手なんかいなかったかもしれないけど・・・


気づくと、上田はポッキーの袋を破ってポリポリとポッキーを食べている

「結構うまいな・・・YOUに手作りを渡されたらどうしようかと思ったよ」

「どういう意味ですか?」

「意味?意味はそのままの意味だけどな」

「・・・あげなきゃ良かった・・・」









リンク記念にイラストを捧げましたら、小説書いてくださいました。
しかもネタリクオッケー!
季節的にバレンタインネタで、しかも矢部を織り交ぜつつ…とお願いしたら、こんな素敵な小説が!
嬉しいです〜
ありがとうございました★

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