>>> 017 . 拍手1 恋煩



 眠る君の横顔を見ていると、不安になる。
「き・り・こ…」
 小さく名前を呼んでから、緒沢は自嘲気味に笑んだ。
「馬鹿だな、オレは…」
 かすかな寝息すら愛しくて、でも。
「桐子…」
 どうしてオレ達は、こうなんだろう。君はどうしてこんなにもそっけなく、オレはこんなにも情けない。
 愛しているのに…オレは君を。
「桐…」
「何?」
 ふっと、呼びかけた緒沢の言葉を遮るように、眠っていたはずの桐子が口を開いた。
「…起きてたのか?」
「違うわよ、何度も名前を呼ぶから目が覚めたの」
 寝返りを打ち、桐子は緒沢を見つめる。怖いくらい鋭い眼差しで、けれど、甘やかに。
「わりぃ…」
「謝るなんて、らしくないじゃない」
 クスリ、微笑んで、腕を伸ばす。桐子は緒沢の頬に掌をあてがい、一度目を閉じてから、囁くように続けた。
「いつもの自信は、どこに忘れてきたの」
 クスリ、からかうように。
「…そうだな、多分」
「多分?」
 頬に触れる桐子の掌に、自分の手を重ね、緒沢も一度目を閉じた。
「お前の中に忘れてきたんだ、取ってこなきゃ」
 桐子の掌に一度唇を押し当ててから、静かに覆いかぶさった。
「緒沢、重い」
「誘ったのはお前の方だろ」
 クスクス。暗い室内に、笑い声。

 愛しているのに、オレはこんなにも君を。






FIN

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ずぅっと前の拍手のお礼画面に載せてた小説です。
久しぶりにQUIZのDVD見ようかなぁ…
緒沢さんが、自分の恋がまるで中学生のようだと自覚している節があります。


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